試行性
先導者が最初の事例を一つつくると、それまで漠然としていた議論が、具体的な数字と日程に変わります。先導者はこれを試行性で行います。
「まだ早いです」。先導者が新しいことを言い出すとき、いちばんよく聞く言葉です。このタイプは、その言葉が正しいかどうかを待って確かめません。小さく一度やってみて、その結果を見て、続けるかを決めます。
冒険好きな人、あるいは頑固な人。周りが先導者につける呼び名は、たいていこのどちらかです。先導者自身は、まだ誰も試していないことを行動で確かめているだけです。やってみる前にはわからないことが思ったより多いと、経験で知っているからです。
先導者が先にやってみる習慣をうまく使うと、周りの人は今までなかった選択肢を得ます。うまく使われないと、ほかの人がついて行く準備を終える前に、次の仕事へ移ってしまいます。だから先導者の成長は、前に出ないことではありません。始めた仕事を、ほかの人が引き継げるように整えることにあります。
先導者は危険を無視する人ではなく、危険がどれほど大きいかを自分で確かめる人です。大きく試す前に小さくやってみて、そこで得た結果で次の試みの大きさを決めます。
一つの機会を前にして、ほかの人が条件を比べている間、先導者は小さくやってみたら何がわかるかを思い浮かべます。何を先に考えるかが違うので、動く速さも違ってきます。
このタイプを理解するとは、慎重か無謀かを採点することではありません。先導者が先に動くことで、いつ機会をつくり、いつほかの人に後始末を残すのか、その条件を前もって見分けておくことです。
先導者が最初の事例を一つつくると、それまで漠然としていた議論が、具体的な数字と日程に変わります。先導者はこれを試行性で行います。
市場や組織が変わる時期には、先導者は拡張感覚と未来感知を使います。まだ名前もない動きの中から見込みのあるものを選び、そこに先に時間を使います。
参考にできる前例がなくても始められるのは、リスク許容と開拓への意欲のおかげです。始める人が一人いれば、残りの人もその後に続いて始めます。
まだ誰もやっていないことを先にやってみるのが、先導者のいちばんはっきりした姿です。続く四つの段階は、このタイプが可能性を確かめ、次の選択肢に変えるまでの順序です。
方法がなさそうに見える仕事で、新しい可能性を先に探します。
小さな実験で、うまくいくかを確かめます。
人々に見えるように可能性を具体化します。
新しく始めた仕事を、次の段階の選択肢にします。
始めた仕事が続かないのは、現実点検、持続管理、協業設計が低いときに起きる問題です。始まりはあっても引き継ぐ人がいないため、数か月後には最初からやり直す状態になります。
先導者が後片づけや繰り返しの管理を後回しにするのは、責任感がないからではありません。もう次の可能性を見ているので、今の仕事の仕上げにそのぶん気が回らなくなるのです。仕事が急ぐほど、この傾向は強まります。
次へ移る前に、この仕事を誰が引き継ぐかを一人だけ決めておけば、たいていは解決します。速度を落とす必要はありません。
先にやってみることは、一人でやるという意味ではありません。先導者は、うまくいくかを先に確かめて知らせてくれる人だと近しい人が知っておけば、誤解は減ります。
やってみないとわからない仕事、前例のない仕事は先導者に任せてください。ただ、始めるだけで離れると、残った人が後始末を負います。任せるときは、離れる前に引き継ぐ内容を書き残すという条件をつけてください。
先導者の成長は、慎重になる方向ではありません。新しく始めた仕事をほかの人が引き継げるように整え、自分が離れた後もその仕事が続くようにする方向です。
一緒に働く人が検証から求めると、先導者はもどかしく感じます。小さく試す範囲を決めて渡せば、その中で結果を持ち帰ります。
以下の人物は「この人がFirst Moverである」と診断するものではありません。公開されている役割や代表的な場面から、近い作動方式を理解するための参考例です。
前漢の外交官、西域の開拓者。
西域への使行 · シルクロード開通の基盤前漢の武帝の命で西域へ送られた張騫は、途中で匈奴に捕らえられて十年あまり抑留されても任務を捨てませんでした。脱出のあと西域の国々の地理と物産の情報を持ち帰り、その報告が東西の交易路が開かれる基盤になりました。
ノルウェーの探検家。
南極点への初到達極限の環境で、準備と決断を組み合わせ、人類の行けなかった地点に先に到達しました。未知の領域を実際の経路に変えた事例です。
アメリカの航空の開拓者。
大西洋の単独飛行女性が航空の領域でできることの境界を広げた人物として知られています。社会的な限界の線を、実際の行動で越えていく先導者らしい場面です。
NASAの数学者。
宇宙飛行の軌道計算新しい宇宙の時代の計算の前提をつくり、それまでなかった道を開くことに寄与しました。静かでありながら決定的な開拓の事例です。
ポーランド出身のフランスの科学者。
放射能研究の開拓まだ見慣れず危険でもあった研究の領域を、科学の中心の主題へ引き上げました。未知の現象を最後まで追い、新しい知の領域を開いた事例です。
先導者は、まだ早いという言葉が正しいかを待って確かめず、小さく一度やってみて決める人です。危険を無視するのではなく、どれほど大きいかを自分で確かめます。大きく試す前に、小さく試します。Beyond Personaは、先にやってみる習慣と、始めた仕事を引き渡す力を、36の特性で合わせて確かめます。
新しいことが好きというだけで、この原型になるわけではありません。やってみたい気持ちと、小さくやってみたら何がわかるかを先に考える習慣は違います。無料診断の76問で最も近いタイプを確かめられ、288問の全体分析では29の原型との距離を順位で確かめられます。
どちらも今のやり方にとどまりません。違うのは、しようとすることです。先導者は、まだ誰もしていないことを先にやってみます。変革者は、すでにある規則について、なぜまだ残っているのかを問います。だから先導者は新しい選択肢をつくり、変革者は古い規則をなくします。
同じことを先に成し遂げた人と自分を比べることがよくあります。手を広げた仕事が多く、まとめて疲れ果てます。次の仕事を見ているせいで、近しい人と過ごす時間は後回しになります。下の反復パターンは、この原型の特性と重なる度合いを計算して選んだものです。
先に動く気質は弱まりません。変わるのは、次へ移る前に引き継ぐ人を決めるかどうかです。一人決めておけば、速度を落とさずに、始めたことを続けていけます。だから、結果を受け取った後に何を変えるかが、検査そのものより大切です。
測定で見る軸が重なる項目です。人が選んだのではなく、測定ルールから計算しています。
自分の結果が先導者にどれくらい近いか、確認してみてください。